そんなある日、軍のみんなが朝から騒がしくしていた。不思議に思って、朝食の場でエドワード様に聞いてみる。
「エドワード様、今日は何かあるのですか?」
エドワード様はやれやれと言った顔でため息をついた。
「またお前は朝礼をサボったのか」
「だって、怪我をした兵士がいたので治療していて行けなかったんです」
「全く、お前が仕事熱心なのはいいが、朝礼をサボるんじゃない。僕もできるならそうしたいのに」
「すみません。次からは気をつけます」
「次からは僕も誘うんだ。わかったねぇ?」
こちらにウインクするエドワード様の笑顔は美しい。見ていると元気が出てくる。これがイケメンパワーか。
「は、はい。それで、何かあったんですか?」
「実は魔王軍の活動が活性化しているんだ。いよいよ王都に攻めてくるんじゃないかって話。だから、その前に魔王城へ攻めいることになってねぇ。僕たちの軍と第二王子の軍が合流することになったんだ」
「なるほど。エドワード様のお兄様が来るんですね」
「そ。兄さんはちょっと変わり者だけど、いい奴だから安心して。あー、でも、聖女がなぁ……」
「聖女様もいらっしゃるんですか?」
聖女様はリンデンバウム国で一番治癒魔法が得意な方だ。高貴な生まれで、その美貌は見た者の心を全て奪うくらいらしい。兵士たちが噂しているのを聞いたことがある。
その聖女様がどうしたのだろうか。
首を傾げると、エドワード様に鼻で笑われた。
「まぁ、お前は大丈夫だと思うけど、聖女は嫉妬深くてねぇ。兄さんに色目を使う女や兄さんを好きになる女を全て潰し回ってるって話」
「それは怖いですね……」
「だから勘違いされないように気をつけろよぉ。お前は俺のお気に入りなんだから、潰されちゃったら困る」
「ただ、面白い実験を思いつく面白女としか思ってないでしょうに」
「面白いことは一番大事だ!」
エドワード様はカラカラと笑った。私は呆れつつ、苦笑した。
この人は憎たらしいが、憎めないお方だ。それに私のこの世界からしたら突拍子もないアイデアを否定せずに熱心に聞いてくれる。そのおかげで、今の私があるのだ。
「そういえば、新しいアイデアを思いついたんですが、聞いていただけますか?」
エドワード様は目を輝かせ、テーブルに身を乗り出してきた。
「良いねぇ! 聞かせておくれよ、エミリー!」
年上なのに、貴重な虫を見つけた少年みたいに可愛い。
私はゆっくりと口を開いた。