「どうしたの?」
「見て、あなたの手から治癒の光が漏れているわ」
 言われるがまま、止血している手を見ると、淡い光が漏れていた。かざしていた手はそのままにハンカチをどかして、傷口を見ると、淡い光が針と糸のような形をとって傷口を縫い合わせている。
「なにこれ……」
「すごい。エミリーは治癒魔法が使えるのね!」
 傷口を縫い合わせ終わると、光は消えていった。傷口は綺麗に縫い合わされている。
 今、私はなにをしたのだろう。手をかざして、自分ならどうやって治すかを考えただけだ。すると光が出て思っていた通りに傷口が塞がった。
 これが治癒魔法……。
 恐る恐る自分の手のひらを見つめるも、いつも通りの手のひらだった。
「……クラクラする」
「お母さん!」
 アイリーンは畑に倒れてしまった。小さな身体ではどうすることもできないので、慌てて村長さんの元へと向かう。白い髭が生えたおじいちゃんの村長さんは自分の畑を家族と耕していた。
「村長さん、助けてください」
「おお、エミリー、どうしたんだい?」
「治癒魔法で傷が治ったのに、お母さんが倒れちゃって!」
「エミリーが使ったのかい?」
「はい。なんか、使えちゃって」
「それは一大事じゃ。おい、お前たち、エミリーのお母さんを介抱してやれ」
「はい」
 村長さんの息子たちが私の家の畑の方へと向かった。私も向かおうとすると、村長さんに止められる。
「ちょっと待ってくれ、エミリー。大事な話がある」
「でも、お母さんが!」
「大丈夫だ。お前のお母さんは治癒魔法の後遺症で倒れただけじゃ。じきに目を覚ます」
「そ、そうなんですか」
 安心して胸を撫で下ろすが、村長さんの視線が痛い。まるで大変なものを見つけてしまったかのような視線だ。