翌日。よく晴れた空の下で私は必死に鍬を振るっていた。今は春先。様々な種を植える時期だ。だから畑を耕す必要がある。それには男手が必要だ。
 しかし、私の家は父親が死んでしまっているし、頼れる親戚もいない。だから、アイリーンと私で何とかするしかないのだ。
 アイリーンは鎌で必死に草を刈っている。私も頑張らなきゃ。
「痛っ」
 突然、アイリーンが悲鳴をあげた。慌ててアイリーンに近寄ると、その甲はさっくりと切れていた。鎌で切ってしまったようだ。
「大丈夫? 今、水持ってくるから!」
 急いで近くの水桶から水を汲んで戻ると、アイリーンはしゃがんで痛みに耐えていた。傷口からはポタポタと血が流れている。
「これで洗い流そう」
「ええ」
 水をかけて傷口を洗い流す。傷口周りは綺麗になったが、血が止まらない。私はポケットの中のハンカチを取り出し傷口に強く押し当て、止血を試みる。手は心臓よりも上にあげさせた。
「結構深く切っちゃったわ。これは焼きごてで焼かなきゃいけないわね」
「焼くの!?」
「深い傷口は焼かないと血が止まらないのよ」
 焼きごてが治療に使われるなんて、信じられない。転生前の私の病院なら局所麻酔をして、縫合針とナイロンで丁寧に縫い合わせるのに。ああ、ここに手術用具があったら、アイリーンに辛い思いをさせないのに。
「え?」
 アイリーンが突然声を上げた。