「だけど、アルバート様、まだ包帯が取れていないじゃない。コイツが治癒に失敗したんでしょう? 大丈夫よ、私なら完璧に治せるわ。寝込んでいる間も私がお世話してあげる!」
「不要だ。新しい魔法でもう十分な治癒は受けたし、身体は全く怠くない。それより、君が他の兵士のところに行け。その方が合理的だ!」
「えー、私、血を見るのはあまり好きじゃな──」
「だったら帰れ」
眉間に皺を寄せたアルバート様はレティシア様に冷たく言い放った。レティシア様はうるうると瞳を滲ませて悲しそうな顔をした。
「私はアルバート様のために頑張ってきたのに」
「じゃあ、俺のために他の兵士の治癒をしてくれ。そうすれば戦力の回復に繋がって私が楽になる」
「でも、アルバート様が心配で──」
「しつこい。エミリーがいるから大丈夫だ。早く兵士の元に行ってやってくれ」
「…………はぁい」
レティシア様は私を睨みつけながら、兵士が呼ぶ方へと去っていった。
私は先ほどの冷たい視線で前世のトラウマが蘇ってきて心臓が激しく脈打っている。あの瞳は私を邪魔者だと厭う目だ。きっと敵認定されたに違いない。あれほどエドワード様に忠告されてたのに失敗した。でも、私は必要な治癒をしていただけなのに。
「エミリー?」