「治癒魔法が全然痛くなかった。それにあの酷い怠さがこない」
「私が開発した方法です。私の軍ではこれが一般的なんですよ。しばらく右腕は動かさないでください」
「わかった」
「あ、このポーションを飲んでください」
「ポーション?」
「私の方法では治癒魔法で全てを治すのではなく、傷口が開かないようにしたら、あとは身体の治癒力をたくさん使います。だから、それを高めるためのポーションを飲む必要があるんです。そうすると、一週間寝込まなくて済みます」
「なるほど……。それは合理的で素晴らしいな」
アルバート様は笑みを見せた。その笑顔に私の胸はドキリと跳ねる。この説明を最初に聞いた人たちは大抵庶民の治療は嫌だとか文句を言うのだ。しかし、アルバート様は合理的だと理解を示してくれた。嬉しい。
それを誤魔化すように私はポーションの瓶を取り出して開け、アルバート様の左手に渡す。ゆっくりとアルバート様の上体を起こして、飲みやすくしてやると、アルバート様は一気にポーションを飲み干した。
「苦くない」
「飲みやすくしてありますから。これから一週間、同じものを飲む必要があるので、お届けしますね」
「ありがとう。君の名前は?」
「エミリーと言います」
「エミリー、これからよろしく」
アルバート様は左手を差し出してきた。それに応えて握手をする。
「はい。こちらこそよろしくお願いします、アルバート様」