翌日、軍は兵士たちを率いてドラゴンを退治しに行った。私たち治癒師はその帰りを野営地で待つ。聖女様だけはアルバート様が心配とのことで、軍についていった。
日が落ちて薄暗くなってきた頃、一人の兵士が治療所に飛び込んできた。
「大変だ! アルバート様がドラゴンに引っ掻かれて、右腕が取れそうなんだ! 誰か、来てくれ!」
「え? 聖女がついていっていたじゃないか」
エドワード様が聞き返すと、兵士は首を振った。
「聖女様はドラゴンの瘴気にやられて倒れてしまった。早く、誰か!」
「エミリー! お前が一番優秀だから行ってくれ! 僕たちも傷ついた兵士たちの治療に向かう」
「わかりました」
エドワード様に指示されて私は治療道具の入った鞄を持って兵士の後についていく。野営地から少し離れた場所にアルバート様は寝かされていた。光の魔法に照らされているアルバート様の顔色は悪く、雑に止血された右腕からは血が流れていた。
「エドワードは?」
眉間に皺を寄せたアルバート様が起きあがろうとするので、それを制して寝かせる。
「エドワード様に命じられてきました。私は一番治癒魔法が上手いので安心してください」
「うぐっ……」
私はアルバート様の右腕に巻かれている布を取り払い、傷口を確認する。深い切創が三つ。これは骨まで達していそうだ。
持ってきた水と消毒液で傷口を洗い流し、私は傷に手をかざす。まずは麻酔魔法だ。通常の治癒魔法では使わない。だけど、患者のストレスを少しでも減らすために、私は痛みを紛らわせる麻酔魔法を開発した。手のひらが淡い緑色に発光する。
「この光はなんだ……? 傷は治ってないのに痛みが減っていく」
「麻酔魔法です。少し、眠くなりますよ。うちではまず痛みを軽減させてから治癒するんです。治癒魔法は痛いですから」
「なるほど」