朝礼の時間ギリギリまで話していたせいで、危うく遅刻するところだった。なんとか待機列に潜り込んだ私は息を整えつつ、朝礼台の方を見つめた。すると、いつもの軍隊長ではなく、見たことのない銀髪の軍人が朝礼台に立った。
銀髪の軍人はどこかエドワード様に似ていて、銀色の瞳は切れ長で涼やかだ。髪型は銀髪のショートヘア。朝日に照らされて、きらりと光る銀髪は月のようだ。
エドワード様に似ているということは、もしかして第二王子様だろうか。
「総員、傾注!」
いつもの軍隊長の声が響き、私たちは姿勢を正して朝礼台を見つめる。すると、銀髪の軍人は一礼した。
「初めまして。私はアルバート・リンデンバウム。今日からこの軍へ合流することになった。よろしく」
「総員、敬礼!」
軍隊長の声に従って敬礼すると、アルバート様も返礼した。アルバート様と入れ替わりで白い長髪の美女が壇上に上がる。美女は白百合のような雰囲気の顔立ちで優しく微笑んでいた。
「初めまして。私はレティシア・シェレバウム。聖女と呼ばれているわ。私が来たからにはもう大丈夫よ。よろしくね」
兵士たちはどよめいた。それを止めるように軍隊長は叫ぶ。
「総員、敬礼!」
慌てた兵士たちがバラバラと敬礼すると、レティシア様は微笑んで手を振った。そして、いつもの軍隊長と入れ替わった。軍隊長はいつもの仏頂面で私たちをぐるりと見回した。
「ということで、第二王子、アルバート様の軍が合流した。これから、シュレッケン山にいるドラゴンを討つ。ドラゴンは火を吹き、毒を撒き散らす。皆、心してかかれ!」
兵士たちが声を上げる。それは地鳴りのように大きく響いた。