今日も早朝から海。



夏葉いるかな…。



きょろきょろと無意識に周りを見回した。



日によって乗るスポットが違うから、いるとは限らないんだけど…。



もう何回も一緒にご飯に行ったのに連絡先も知らないし…。



波に乗りながらもビーチの方に目を向けて夏葉を探してる。



あっ、バランス崩した…。



海に落っこちた。



「穂風ちゃん今日調子悪くない?」



サーファー仲間の村瀬さんがボードの上からあたしに声をかける。


村瀬さんは、40歳の女性。



小学生の息子さんがいて、たまに海に連れてくる。



「だよね~。なんでだろ…」

「なんかいつものキレがないよ」



それは自分でもそう思う…。



村瀬さんと話しながらも、無意識にビーチをチラチラと見ている自分に気がついた。



あたし、夏葉と波乗りするの、きっとすごく好きなんだろうなあ。



11時過ぎになって夏葉が来た。



そのときちょうどあたしは沖に向かってパドリング(※サーフボードの上で両手をクロールのように漕ぐこと)していたときで。



「あ、夏葉だ」



村瀬さんの声で慌てて後ろを振り向いた。



もう今日は来ないだろうって諦めてたからなんだかすごく嬉しい。



ボサボサの髪の夏葉がボードの上にまたがっている。



なんか可愛い…。



「はよ~…」

「『はよ~…』って…。もうお昼だけど…」

「ん~…。昨日遅くまで飲み会してて寝坊した~…」

「飲み会?」

「そ。高校のやつらと久しぶりに会ったから」



高校の元同級生か…。



当たり前だけど、夏葉はあたしが全く知らないコミュニティに入ってるんだ…。



なぜか心が切なく締め付けられた。