それから昼過ぎまで、穂風とずっと同じスポットで波に乗り続けてた。



「そろそろ帰ろうかな」

「あ、俺も」



海から上がると、めちゃくちゃ寒い。



さっきまでは波に乗ってたから暑かったけど…。



「さっむい! 夏葉、なにで来た!?」

「原付だけど」

「じゃあ駐輪場まで走るよ!」



板を持ちながら小走りする穂風。



俺も一緒に走る。



穂風は自転車だった。



赤い派手な自転車。



自転車のカゴに雑に入れてあるバッグから穂風はバスタオルを出して羽織った。



「盗まれねえの?」

「自転車は鍵してあるし、貴重品は身につけてるから盗まれても困んないの」



そう言って、ウェットスーツの首元のチャックを開く。



首から提げてるスマホを出して俺に見せた。



「は~、あったまった。よし、帰ろ~」



穂風がそう言って自転車に乗った。



俺はそんな穂風の自転車を手で止める。



「ん?」



キョトンとした顔の穂風。



穂風ともっと話したい。



「飯、食いに行かねえ?」



俺がそう言うと、キョトンとした顔の穂風は、すぐに笑顔になった。



「いいよ~。じゃあおすすめなとこ教えてあげる」



こうして、俺の湘南での暮しが幕を開けた。