「穂風も浴びる? ウェットスーツのまま車乗りたくないだろ。Tシャツ貸すけど」

「わーい。実は気になってた」



って、あたし男の人の家でなにシャワー浴びるとか言ってんの…?



それに気づいたのはシャワーを浴びながら。



やば、なんか意識してきちゃった…。



ウェットスーツを脱ぎ、水着のままシャワーを浴びてお風呂場から出た。



用意してくれた大きいTシャツとジーパン。



夏葉ってこういう匂いなんだ…。



はじめてのことに、なんだか急にドキドキしはじめた。



えっえっ、なにこれ…。



ドキドキしたまま、タオルでよく拭いた水着の上にぶかぶかのTシャツを着る。



ジーパンにベルトをして、Tシャツをイン。



丈の長すぎるジーンズの裾は折った。



「シャワーありがと…」



夏葉のいる居間に戻る。



座ってスマホを見ていた夏葉は、顔をあげた。



「…かわいいな」

「へっ?」



か、かわいいって言った?



美人とかはよく言われる。



かわいいって男の人に言われるのははじめてかも…。



心臓のドキドキが止まらない。



あたしどうしちゃったの!?



「じゃ~行くか」



ここに着いて5、6分くらいしか経ってないけど、なんか密度が濃かったな…。



車の鍵を持った夏葉に続いて、アパートの階段を降りた。



すぐ下の駐車場に置いてある黒の国産のSUVが夏葉の車らしい。



多分、車と原付、サーフボードや家具でお金がかかってるから住む部屋は安く抑えたんだろうな。



車の助手席に乗り込んだ。



左ハンドルだ…。



「国産車なのに左ハンドルなの?」

「あっちで買ったからな」

「台湾って左ハンドルなんだ」

「そ~。だからこっちで走るとたまに混乱するんだよな」

「安全運転でお願いします」

「はいよ」