しばらくして着いた夏葉の家。



意外なことに昔ながらの木造アパート。



「今ぼろいって思っただろ」

「ま、まさか~…」

「顔に出てんぞ」



はい…。



でも、サーフボードを一時的に置いてもらうため上がった部屋の中は、木造アパートとは思えないおしゃれさだった。



正直部屋自体は狭い。



だけど、家具とか家具の配置がレトロで良い味を出していておしゃれ。



この木のローテーブルとか、普通こんな和室にあったら違和感ありそうなのに、妙にマッチしてる。



他に置いてあるのは紺のマットレスと小さい本のラック、液晶テレビ。



あと何種類かのカメラも、見せる感じで壁に設置した棚に綺麗に収納されてた。



狭い部屋にこんなに家具がおいてあるにも関わらず、家具の背が低くてスッキリしてるから全然狭そうじゃない。



上にかかってる2本の板(※サーフボード)もかっこいい。



窓際には灰皿が置いてある。



「夏葉ってタバコ吸うの?」

「たまにな」

「ふーん」



確かに似合いそうだ。



あと、壁に夏葉が撮ったと思われる写真が何枚か吊してある。



全部サーファーの写真で、その中に一枚、あたしの写真。



多分、初めて会ったときのやつだ…。



なんか照れる…。



「置くとこねえから部屋ん中立てとく感じでいいか?」

「いいよ~。ありがと」



そう言って夏葉に板を渡す。



夏葉があたしの板を立てかけてからそれをまじまじと眺めた。



「良い板だな」



お気に入りの茜色のサーフボード。



パパのブランドとママが一緒に作ってくれた世界で一枚だけの板だ。



ブランド名や製作者の名前はあえて書いていない。



いかにも娘ですって言ってるみたいだもん…。



どこの板か聞かれたら嫌だなと思ったけど、夏葉はそれ以上なにも聞いてこなかった。



「一瞬だけシャワー浴びてくる」

「はーい」



夏葉はそう言ってお風呂場に行って、本当に一瞬で戻ってきた。



私服を着てる夏葉ははじめてだ。



私服もかっこいい。