「あっ」



夏葉が何かを思い出したような声を出した。



「なに?」

「そういやワックス(※サーフボード用のワックス)切らしてたんだった…。近くにサーフショップねえ?」

「それならいいとこあるよ~」



悠星(ゆうせい)くんっていうあたしより3つ年上のサーファーがやってるサーフショップ。



悠星くんはプロサーファーだ。



あたしやあたしのパパは特別だけど、プロでも基本的にサーファーはそれだけの収入では食べていけない。



だからこうやって副業している人が多いんだ。



まあ、悠星くんの場合はスポンサーがついてるから収入面でそんなに困ってないと思うけど。



両親がアマチュアサーファーで、家族でやってるお店だ。



「知り合いが経営してるサーフショップなの」

「俺の会ったことある人?」

「ううん、普段はもうちょっと西側のポイントにいるから多分会ったことないと思う」

「ふーん。ここから遠いか?」

「うーん、原付で30分か40分くらいかな」



あたしが言ったら夏葉はちょっと考えた。



そしてあたしに言う。



「とりあえず飯食ってから行くか」

「いや~…。開店時間的には開いてると思うけど閉まってるかも…」



悠星くん、割と適当だから結構早めに閉めちゃうことあるんだよね…。



サーファーは適当な人が多い…。



「あ~…、じゃあ車で行くか」

「ん? なんで?」

「腹減ったから早く行きてえ」



たしかに、あたしも…。



ここからすぐ近くだという夏葉の家に2人で車を取りに行った。



自転車に乗るあたしのペースに合わせて夏葉が原付を走らせてくれる。