それから10数分すると、電車は西荻窪駅に着いた。


頼りない足取りで亜季がホームに降り立つと、頭上から暖かい春の日差しが照らしつける。

あの旅立ちのホームと同じような包み込むような優しい日差しに、亜季は思いがけずほっとするような心地よさを感じ、慌てて頭の中からその思いを振り払った。


まだ慣れていないだけだ。

きっと暮らしていける。


大丈夫。

大丈夫。


亜季はそう自分に言い聞かせると、新しい街での第一歩を踏み出した。