その日会社が終わると、麻婆豆腐の材料を買ってアパートに帰った。
父の姿はまだ無かった。
きっと、またパチンコにでも寄って負け込んでいるのだろう。

私の前は江波芽衣香(えなみめいか)。
母は私が高校生の頃に病気で死に、それからは父と二人三脚でやってきた。
父は魚市場で働いている。
パチンコは父の日課のようなものだ。

私は麻婆豆腐を作ろうと腕まくりして、食材をテーブルの上に出した時…
そこには一枚のメモ書きがあった。

『すまない、芽衣香…』

「?」

また、パチンコで負けて他人にお金でも借りたのか?
まったく、尻拭いはいつも私ではないか!