「今日は寝なかったな」


帰り道を歩きながら、柊くんが意地悪な笑顔をあたしに向けた。

その笑顔にドキドキしながら、半分照れ隠しで膨れて見せる。


「寝ちゃったのなんて1回だけじゃんっ

柊くん、すぐからかうんだもん。やだっ」

「沙織からかうのがオレの趣味なんだから仕方ねぇだろ?

諦めろ」

「……星のが好きなくせに」


ぽつりと漏れてしまった言葉に、柊くんがあたしを振り返る。

あたしは柊くんの顔を見てから、自分のしてしまったやきもち発言に気が付いた。

……だけど、もう遅い。


目の前にはすっかり意地悪モードオンの柊くんの顔。


「沙織、星なんかに嫉妬してんの?」

「……してない」


背の高い身体を少しだけ屈めて、あたしの顔を覗き込む柊くん。

もしもあたしの気持ちを知っての上でやってるなら……かなりの挑発。


「へぇ? ……まぁ、いいけど」


よくないよっ!


あっさりと諦めて歩き出す柊くんに、後ろから大きく叫ぶ。

……心の中で。



分かってるんでしょ?

知ってるんでしょ?

バレてるんでしょ?


なのに、なんで何も言ってくれないの……?



やっぱり、あたしの気持ちに応えられないから――――……?



追求されたって困るだけなのに

追求されない事が気に入らない。


自分で打ち明ける勇気がないくせに

柊くんが気付いてくれるのを待ってるだけ。



ねぇ……

柊くんの気持ちが、知りたいよ。




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