ふぅ……っと、息を吐くと白く染まるここは、大学の屋上に備え付けられている天文台。
天文台って言っても超シケてるけど。
10畳くらいの広さの場所に、古びた望遠鏡が一台。(しかもこれが結構大きくて場所を取ってて邪魔)
後は、小さな椅子と机。
星関連の本棚が1つ。
よって、自由なスペースは6畳ないくらい。
で、更に1年前からあたしが色々と持ち込んだ毛布やら漫画やらお菓子が散らかってるから……
自由スペースは3畳ないくらい。
柊くんは毎日、21時から23時まで、そんな窮屈な空間にいる。
「ねぇ、天文部って柊くん1人なの?」
「ああ。つぅか、多分他の生徒はこの部の存在自体知らねぇな。
俺もここを独り占めしたいから、誰にも言ってないし」
星の図鑑と望遠鏡を交互に見ながら答えた柊くんの言葉に、小さく胸が弾む。
だって、独り占めしたいって……
「……でも、あたし毎日来ちゃってるし、独り占めじゃなくなってるよ?」
少しでも柊くんの気持ちを知りたくて聞いた疑問。
どんな返事がくるのかビクビクしながら柊くんを見つめるあたしに、柊くんは片頬を上げて微笑んだ。
「沙織は特別。分かりきった事聞くんじゃねぇよ」
そう言った柊くんは、長い手を伸ばしてあたしの頭をくしゃっと撫でる。
そうして少しだけあたしに微笑みを向けた後……また興味を星に戻す。
ねぇ……
なんで毎日あたしがここに来てるのか、分かってる?
柊くんが好きだからなんだよ……?
ねぇ……
なんで嘘ばかり付くか分かってる?
柊くんに気付いて欲しいからなんだよ……?
ねぇ……
なんでこんなに近くにいるか分かってる?
柊くんに、触れられたいからだよ……?
もっともっと、触れてよ。
もっともっと、あたしに興味持ってよ。
星なんかより
あたしを見てよ――――……
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