……――― 柊くんの気持ちが知りたいから。



だから。あたしは今日も嘘を付く。






 ※※※



「ねぇ、星ばっかり見てると盗撮罪で捕まる法律が出来た事知ってる?」


あたしのマヌケな嘘に、柊くんは望遠鏡を覗き込んでいた視線を一瞬だけあたしへと移す。

ちらっと、本当に一瞬。


なのに、その一瞬であたしの心臓はクラッシュ寸前。

……相当やばい状態。


柊くんは、その後また視線を望遠鏡の先の星へと戻す。


「へぇ。誰に訴えられんの? それ」

「……宇宙人?」

「へぇ? でも残念ながらこの望遠鏡はそこまで見えねぇんだよな。

月のクレーターくらいまでなら見えるけど……宇宙人の家を覗くなんてもっと高けぇ性能のいい望遠鏡じゃなきゃ無理だな」

「……」

「つぅか、もっとマシな嘘付けよな。

沙織はいつもいつも変な嘘付いてばっかで……オレに何か言いたい事でもあるのか?」


……あるよ。

超あるよ。

超あるって言っても、1個だけだけど……


その1個が超大切なのっ!!

柊くんの星なんかよりずっと!!!


「……ないもん。

ってゆうかあるなら言ってるもん。こんな毎日会ってるんだから」


ぷくぅっと膨れたいのを半分我慢して、唇だけを尖らせる。

それを見た柊くんは、ふっと笑みを零した。


「そうだよな、毎日会ってるもんな」


その微笑みを横目に見てしまったあたしの胸が、また大きく飛び跳ねる。





柊くんは知らない。

あたしが嘘を付く意味を。


その理由を……柊くんは、知らない。




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