あの時の事は、10ヵ月以上経った今でも鮮明に覚えてる。

一瞬、告白されたんだと思ってかなりテンションが上がって、でも違うって分かって慌ててそのテンションを下げて。


……あれが本当に告白だったんならよかったのに。


柊くんは、本人が言うには彼女はいないらしいし、特に親しい女の子もいなそうだし。

土日は何してるか分からないけど、平日は毎晩天文台にいるし。

特定の女の子はいないハズなんだ。

……あたし以外。


多分、あたしが一番近くにいるハズなのにな……

そんなに魅力がないのかな、あたし……



「どうした? なんか変な顔してる」


隣から覗き込んでくる柊くんを、あたしはじっと見つめて。

そして目を逸らした。


「……別に。もっともっと魅力的になりたいなって思っただけ」

「なんだよ、魅力的って」

「魅力的は魅力的だもん。

こう、歩いてるだけでその辺の男の子を悩殺できちゃうような女の子になりたいなって」


……いや、ちょっと違うけど。

絶対笑われると思ったのに、柊くんは小さく眉を潜めてあたしを見据えた。


「そんな必要あんの?」


いつもと少し違う雰囲気の柊くんに、あたしは少しだけ身を潜める。


「え、なんで怒るの?」

「……別に怒ってねぇけど、そんな必要ねぇだろ?

沙織の事なんか俺だけが分かってればいい事だろ?

他の男なんかに分からせる必要なんかねぇよ」


真剣な顔をして言った柊くんに、胸がドキドキと騒ぎ始める。

そんなドキドキに追い出されたように言葉が出てきて……


「あのっ……柊くん、それって」

「ほら、くだらねぇ事言ってないで帰るぞ」


でも、柊くんに遮られてしまった。



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