「ブランシュは、何が好きなんだ?」

「私が、何が好き……ですか?」

 アーロンが帰って来て数日後、朝食時に夫に質問され、彼が何を聞きたいのかよく理解出来なくて、私は首を傾げた。

 将軍職にあるアーロンは、戦勝して帰って来てからというもの何日経っても忙しい。

 戦争の後処理や、その後に国家間で交わす重要文書などにも彼は関わるらしく、時間に追われる多忙な日々が続いていた。

「ああ……日々、好む食事だったり、なんでも良い。教えてくれ」

 アーロンは帰ってきた日以来、私の前で誰かを怒鳴りつけたりすることはなかった。

 今思えば、彼だって一年振りに帰って来たら、信じられない事態が起きているのを見て、大きく混乱していたのだろう。

 夜会で妻が扇情的なドレスで、再婚相手を探したり……今思うと、本当に恥ずかしいことをしてしまった。

 けれど、あの時の夜会に居た面々は、私に火遊びを持ちかけて来るなんて、絶対に有り得なさそうだった。

 あの時の怒り狂ったアーロンを見れば、そんな気持ちはどこかに吹き飛んでしまうはずよ。

「……そうですね。私の好物ですか」

 私は答えを待っている夫に、ここで何を言うべきか迷った。