「旦那様と、近くに居ると! 胸が苦しくなって、恥ずかしくて堪らないのです! 旦那様が悪い訳では、ありません!」

 私が両手を彼の前に突き出すと、アーロンは顔を赤くして、驚き目を見開いていた。

「え? あ……ああ。そうか……すまない」

 なんとも言えない空気の中で、私とアーロンの二人は隣に座って、ただ黙って庭園を見ていた。

 ほんの一日前に再婚相手を探さなくてはと奮起していた私には、とても信じられない未来だろう。

 私だって……本当に意味がわからない。

 死んだと思っていた人が、生きていたのよ。魔法でもなんでもなく。訳ありで。

「ブランシュ……その、少し良いか。君が落ち着くまで、絶対に近づかない」

 アーロンは緊張して余裕のない私を宥めるようにして、敵意がないと示すように開いた両手を向けた。

「はい。大丈夫です」

 私がこくりと一度頷いたのを確認してから、アーロンは慎重な様子で口を開いた。

「何度も言うが、生きていることを知らせずにいて悪かった。しかし、悔いはない。これで我が国は勝利し、多くの国民の命が救われた」

「わかっています。必要なことだったのだと」