クウェンティンの言葉の後、私は部屋の温度が何度が下がったような気がした。

 淡々と状況説明をしたクウェンティンに、アーロンは感情を見せずに頷いた。

「よし。わかった。ヒルデガードを追え。殺そう」

「御意」

 アーロンは血の繋がった実の弟を殺そうと指示して、クウェンティンは当たり前のように頷いた。

 うっ……嘘でしょう!

「まっ……待ってください! その程度で弟を殺すなんて、いけません!」

 このまま黙ったままでいると、大変なことになってしまうと、私は慌てて二人の会話に口を挟んだ。

「何故だ。ブランシュ。君だって、そんなことを言われて、不快だっただろう。それに、あいつは実際のところ死刑になっていてもおかしくない男だ。ブランシュが気に掛ける価値はない」

「けれど……だからと言って、殺してはいけません……アーロン。落ち着いてくださいっ……」

 私は彼の名前を自然に呼んだことに気がついて、手で口を覆ったけれど、アーロンは嬉しそうに微笑んでくれて、私は心臓が止まりそうになった。