「ですが、奥様に止められました。旦那様より、奥様の意向を最優先にせよとお聞きしておりましたので」

「……では何故、ヒルデガードや偽の愛人が入り込んだ時点で、ブランシュに俺が帰って来ると言わなかった? これは、緊急事態に匹敵する事態だ」

 アーロンが不機嫌そうにそう問えば、クウェンティンは不思議そうに答えた。

「僕は旦那様から奥様を、一年間必ず傷一つなく守るように、意向を最優先するようにとしか、指示されておりません」

「いや、だから……そこは臨機応変にだな……」

 困ったように言ったアーロンに、クウェンティンは生真面目に言い返した。

「旦那さまからは、奥様の御身を第一にお守りすること、それに奥様の意向を最優先するようにとしか、聞いておりません。旦那様は必ず一年以内に戻られるので、帰って来て下されば、あの放蕩者と偽愛人については、すぐに解決すると思っておりました」

 確かに、クウェンティンは私の希望通りに動いてくれた。

 ヒルデガードを殺そうと言った時も、それは止めて欲しいと言ったのは私だし……身重なサマンサを追い出さないでくれと、クウェンティンにお願いしたのも私……。