「ええ。信じられないと思われますが、あれは全て、現実でございます……ですが、奥様が信じ難い出来事だと思われることも、無理はありません。奥様。旦那様は生きていると知りつつ、今までお伝え出来ずに申し訳ありませんでした」

 腰を折り深く頭を下げたクウェンティンに、私は首を横に振った。

「頭を上げなさい。クウェンティン。それも全て、旦那様の指示でしょう。貴方はただ指示通り従っただけ。私は大丈夫です。旦那様の、お仕事のためでしょう?」

「そのようです。見事に自軍を勝利に導き、こうして帰還されました」

「私は二度怒られて旦那様に、嫌われてしまっているようです……もしかして、このまま離婚されてしまうのでしょうか?」

 初めて夜会で会った時にも、異常に怒っていたし……私が手を怪我していると知っただけで、すぐに怒鳴り声を上げていた。

 何があったのかと聞いてくれれば、私だって説明することが出来たのに。

 ……怒りっぽい人は、苦手。すぐに不機嫌になって、私に向けて手を上げていた人を思い出してしまう。

「奥様……何を仰います。そのようなことは、あろうはずがありません」