今までに考えもしなかった理由で驚きはしたけど、夫がこうして生きて帰って来た理由を知ることが出来て頭では納得はした。

「……戦争という殺し合いに嘘もなく正々堂々というルールがあるならば、俺だって従うさ。だが、勝つことを優先すれば、嘘だってつく。軍勢の数の差を考えれば、卑怯な手を使わざるをえない。騙すなら身内からと言ったものだが……まさか、留守中に勘当されたはずの弟が帰って来るとは思わなかった」

「ああ。待ってくれ兄上……悪かった。どうか、追い出さないでくれ。お願いだから」

 許しをこうように泣き出しそうな顔のヒルデガードは、みっともなく膝をついて祈るように両手を組んだけれど、アーロンは首を横に振って弟の頼みを拒絶した。

「縁は既に切った。殺されないだけ感謝しろ。お前の願いは、一切聞かぬ。さっさと出て行け。ああ……この女も居たな。誰だ? お前の女か?」

 ……なんですって? そこに居たのは、先日元気な男児を出産したばかりのサマンサだ。