私の真剣な言葉を聞いたサムは息を呑み、しわが刻まれた目に涙を浮かべた。

「必ず、約束いたします……なんと、おいたわしい。奥様は何も悪くないのに。こんなことが、許されて良いのでしょうか」

 黒い手袋をしているにも関わらず生地が破れ、皮膚がめくれた私の手を見て、悲しそうだ。

 私はぎゅっと手を閉じて、じんじんとした痛みから気を逸らした。

 大丈夫……こんな怪我、すぐに治る。けれど、サムのような平民の命は、義母にとっては気にするほどもないものだった。

 彼の命に比べれば、こんな傷……なんでもない。

「ねえ。サム。私、もうすぐここを出ていくの。もうすぐ、亡くなった旦那様の喪が明けるから……だから、そういう意味でも問題を起こしたくないの。お願いだから、黙っていてね?」

 そうだ。問題は起こしたくない。だって、もし誰かと再婚するのなら、そうであった方が良い。

 涙ぐんだサムは何度も頷き、握った私の手を覆うように手で包んだ。

「何も出来ず、本当に申し訳ありません。もし、旦那様が生きておれば、きっと奥様を守ってくださったでしょう」