「私がこれを踏んで怪我すれば、どうするつもりだった!? そこの使用人を、お前はどうするつもりなの。ブランシュ!」

「本当に申し訳ありません。お義母様。使用人の粗相は、私の責任です。私が代理で責任を取ります」

 ここで私がこう言わずに、義母にサムを引き渡すことになれば、彼は死んでしまう。

 公爵家出身の義母は、それが許される大きな権力を持っている。

 義母は私にこう言わせるために、使用人の粗相を探していたのだ。

 それは、私だって理解していた。けれど、広い庭を剪定しなければならない庭師が、何か落とし物をするなんて、良くあることだ。サムは悪くない。

 何もかも、油断していた私が悪い。使用人に良くして貰っているなど、義母に対しては決して言ってはいけなかったのに。

「座りなさい。ブランシュ……どうすれば良いか、お前には良くわかっているでしょう?」

「……はい」

 私は服が汚れることも気にせず、地面に膝をついた。両手を差し出し、ぎゅっと目を閉じる。

 ヒュンっと風を切る音に、身体が震えてしまった。