「ブランシュ! 私が怪我をしてしまうところだったわ! これを落とした庭師を、ここに呼びなさい!」

 いきなり大声で怒鳴り付けられ、私は心臓がぎゅうっと絞られるような感覚を思い出した。

 ……ああ。この人が、変わるはずなんてなかった。私は一体何を、勘違いしていたのだろう。

 義母は私が使用人と上手くやっていることを知って、その関係を故意に壊してやろうと……そう思うような人なのに。

 私の後に付いていたクウェンティンは、急ぎ走って年老いた庭師サムを連れて来た。

「クウェンティン。私とサムを残して、ここから立ち去りなさい」

「奥様? しかし……」

 私が小声で耳打ちしたクウェンティンは、戸惑っているようだ。けれど、余計な人がここに残れば、彼らにも累が及ぶ可能性だってあった。

 無関係な人を巻き込みたくない。

「良いから、行きなさい!」

 初めて彼に声を荒げて命令した私に驚いたのか、クウェンティンは慌てて頭を上げた。

「奥様……かしこまりました」

 私と庭師サム、そして義母のグレースのみになったその場で、怒声が響いた。