「はい。ですが、良い使用人に恵まれましたので……」

 これは、嘘偽りのない事実だ。

 当主アーロンが居なくて嫁いでそうそうに未亡人になった私を支えてくれたのは、クウェンティンを始めキーブルグ侯爵邸で仕える使用人たちだった。

 慣れない私の至らぬ点も、慣れている彼らが居たからなんとかなったという部分も多い。

「そう……ああ。本当に良い庭ね。帰る前に、見ても良いかしら?」

「はい。お義母様。どうぞ」

 義母グレースが、癇癪を起こさずに帰ってくれた……先程からしくしくと痛んでいる胃の辺りを片手で押さえながら、私は義母に続いて立ち上がった。

 ……良かった。本当に良かったわ。

 久しぶりにこうして会った義母は、私がエタンセル伯爵家に居た時よりも、だいぶ落ち着いているように見えた。

 一年も経てば、人は変わってしまうのかもしれない。

 良きにつけ悪しきにつけ。

 庭を歩く義母が唐突に立ち止まり、道に落ちていた鋏を持ち上げた。きっと庭師が落として忘れてしまった物だろう。

「お義母様、それは私が……」