彼女の言う通りに三着喪服を作ってから、私はそれを着まわしていた。

 本来ならば未亡人とは言え、常に喪服で居なければいけないということではない。

 執事クウェンティンは新しいドレスを作れば良いと何度も何度も言ってくれたけれど、私は肌着を何着か新調しただけで贅沢するつもりはなかった。

 そもそも、キーブルグ侯爵家に嫁ぐまでハンナのおさがりを着ていたし、私は贅沢する方法も知らない。

 それに……もうすぐ再婚して出て行く予定のキーブルグ侯爵家のお金なんて、自分勝手に使えるはずがないわ。

「ええ。そろそろ、一年前に亡くなった夫の喪が明けますので……」

 歯切れ悪く言った私の言葉に、義母は手に持っていた扇を開いて、興味なさそうに言った。

「ああ。確かそうだったわね。ここ一年は、大変だったでしょう」

 労いの言葉を掛けられても、この義母は絶対にそうは思っていないと理解してしまえるのも、複雑な気持ちを抱いた。

 言葉を言葉通り、受け取れない……それに、義母グレースはいつ機嫌を損ねてしまうかもわからず、私は常に怯えなくてはいけなかった。