「ええ。私もブランシュを心配していたのよ。嫁いだ先で夫がいきなり亡くなってしまうなんて、夢にも思っていなかったものだから。レナードも心配していたわ……貴方に社交が出来ているかとね」
義母グレースは嫁いで一年近くにもなろうとしている私の元へ、突然先触れもなく訪れると、無表情のままでそう言った。
「ご心配して頂いて、ありがとうございます。お義母様」
冷たい口調や視線などを見るに、彼女の言葉通り、私を心配などしているはずなどない。
けれど、私は嬉しそうな声を出して、礼を口にするしかなかった。
いつものように喪服を着て顔にもヴェールを付けている私のことを、目を眇めて見る義母は、この目に映るもの、何もかもが気に入らないと言わんばかりだった。
これまでにエタンセル伯爵である父と義母は、私の嫁いだキーブルグ侯爵邸には訪れたことがなかった。
アーロンよりお金を貰い持参金なしという条件で嫁ぐことは許されたけれど、それからは私は肉親でもなんでもないと考えていたのだろう。
「ブランシュ。この前、ハンナに会ったそうね」
「はい。夜会で、偶然会いました……ハンナは本当に可愛らしくて、すぐに結婚相手が決まりそうですね」
これを聞いて、義母が前妻の娘である私を思い出した理由を理解することが出来た。
きっと、あの時に会ったハンナが私の話をしたから、私を思い出し、自分もこうして会いたくなったのだろう。
「ええ。貴方も侯爵家に嫁いだのだから、豪華な生活をしていると思ったら……そうでもないのね。その喪服も、そろそろ寒いのではなくて?」
私が着ている黒い喪服を、グレースはじろじろと観察していた。無遠慮で失礼な態度だけど、彼女に注意出来るはずもない。黙って耐えるしかなかった。
義母グレースは嫁いで一年近くにもなろうとしている私の元へ、突然先触れもなく訪れると、無表情のままでそう言った。
「ご心配して頂いて、ありがとうございます。お義母様」
冷たい口調や視線などを見るに、彼女の言葉通り、私を心配などしているはずなどない。
けれど、私は嬉しそうな声を出して、礼を口にするしかなかった。
いつものように喪服を着て顔にもヴェールを付けている私のことを、目を眇めて見る義母は、この目に映るもの、何もかもが気に入らないと言わんばかりだった。
これまでにエタンセル伯爵である父と義母は、私の嫁いだキーブルグ侯爵邸には訪れたことがなかった。
アーロンよりお金を貰い持参金なしという条件で嫁ぐことは許されたけれど、それからは私は肉親でもなんでもないと考えていたのだろう。
「ブランシュ。この前、ハンナに会ったそうね」
「はい。夜会で、偶然会いました……ハンナは本当に可愛らしくて、すぐに結婚相手が決まりそうですね」
これを聞いて、義母が前妻の娘である私を思い出した理由を理解することが出来た。
きっと、あの時に会ったハンナが私の話をしたから、私を思い出し、自分もこうして会いたくなったのだろう。
「ええ。貴方も侯爵家に嫁いだのだから、豪華な生活をしていると思ったら……そうでもないのね。その喪服も、そろそろ寒いのではなくて?」
私が着ている黒い喪服を、グレースはじろじろと観察していた。無遠慮で失礼な態度だけど、彼女に注意出来るはずもない。黙って耐えるしかなかった。