優雅にお辞儀をしてから去っていく妹の背中を見ながら、私は大きくため息をついた。もうあの義妹と会話わずに済むのなら、どんなにか気が楽だろう。

 けれど、私たちは義理とは言え姉妹で、同じ国の貴族だ。何かと折につけ顔を合わせれば、ああして嫌味を言われてしまうだろう。

 この夜会に来た主な目的だった領地の作物の商談相手とも会うことが出来たし、今夜は帰った方が良いわね。

 そう思った私が馬車へと向かえば、執事のクウェンティンは、お行儀良く馬車の前で立って待っていた。

 他の貴族の従者たちは要領よく適当にサボっていると言うのに、本当に真面目なんだから。

「……クウェンティン。外で待つのは寒かったでしょう。中に入って待っていて、別に構わないのよ」

「奥様はお気になさらず。執事として主人の帰りを待つことも、僕の仕事の内です」

 彼は私の手を取って馬車へと乗せると、踏み台を片付け前の席へと座った。

 クウェンティン本人はああ言っても、私には長時間外で待たせたままであることは抵抗がある。