私には会ったこともない夫だったとしても、形式上はアーロン・キーブルグの未亡人なので、一年間は黒い喪服を着ることになる。
執事クウェンティンは、いくらでも私のドレスを作って良い。生前アーロンからはそう聞いていると何度も言ってくれたけれど、一年が経とうとしている今も喪服を何着か必要なくらい作っただけで終わった。
だって、喪が明けてしまえば、キーブルグ侯爵家で悠々自適に暮らすヒルデガードは、義姉の私に結婚するように求めてくるだろう。
だから、もしそうなれば、私は違う男性との再婚をそうそうに決めて、キーブルグ侯爵家の財産を全て彼に譲り渡し逃げ出すつもりで居た。
ある日、私は領地の取り引きの商談もあり、社交のため夜会に出ていたのだけど、そこで義妹のハンナに久しぶりに会った。
ハンナは先日、貴族令嬢として社交界デビューを果たしていた。
彼女は亡くなった父似のようで金髪碧眼に華やかな顔立ち、そして、目にも鮮やかなドレスを身にまとい、目立たぬように壁際に居た私を見つけ無遠慮に近づいてきた。
「あらあら! お義姉様。なんだか、お久しぶりです。会った事もない夫のために、顔をヴェールで隠し、黒い喪服を着て大変ですわね。嫁入りされてから、肌荒れは良くなられました?」
ハンナは周囲をはばからずに大きな声で、エタンセル伯爵家に居た頃のように私へ嫌味を言って来た。けれど、近くにいる面々は貴族らしく素知らぬ顔を決め込んでいた。
執事クウェンティンは、いくらでも私のドレスを作って良い。生前アーロンからはそう聞いていると何度も言ってくれたけれど、一年が経とうとしている今も喪服を何着か必要なくらい作っただけで終わった。
だって、喪が明けてしまえば、キーブルグ侯爵家で悠々自適に暮らすヒルデガードは、義姉の私に結婚するように求めてくるだろう。
だから、もしそうなれば、私は違う男性との再婚をそうそうに決めて、キーブルグ侯爵家の財産を全て彼に譲り渡し逃げ出すつもりで居た。
ある日、私は領地の取り引きの商談もあり、社交のため夜会に出ていたのだけど、そこで義妹のハンナに久しぶりに会った。
ハンナは先日、貴族令嬢として社交界デビューを果たしていた。
彼女は亡くなった父似のようで金髪碧眼に華やかな顔立ち、そして、目にも鮮やかなドレスを身にまとい、目立たぬように壁際に居た私を見つけ無遠慮に近づいてきた。
「あらあら! お義姉様。なんだか、お久しぶりです。会った事もない夫のために、顔をヴェールで隠し、黒い喪服を着て大変ですわね。嫁入りされてから、肌荒れは良くなられました?」
ハンナは周囲をはばからずに大きな声で、エタンセル伯爵家に居た頃のように私へ嫌味を言って来た。けれど、近くにいる面々は貴族らしく素知らぬ顔を決め込んでいた。