けれど、義姉であるとは言え、ヒルデガードに私は何も言えない。キーブルグ侯爵家の血筋の正当性は、彼にあると思うからだ。
「ブランシュは、大人しく可愛らしい女性で素晴らしい。君のような人と結婚できれば、それはそれは幸せなことだろう。死んだ兄も惜しいことをした……国を守って死ねたならば、軍人としてそれも本望だろうが」
亡き兄を揶揄するようなヒルデガードの言葉を聞いて、その場に居た使用人たちの空気が悪くなったけれど、私は片手を挙げてそれを留めた。
特にクウェンティンは、無表情が常であるというのに、ヒルデガードが兄アーロンを馬鹿にしたような軽口には、とても我慢できぬようですぐに殺気立ってしまう。
兄を嘲り怒りを煽るような言葉に、私だって嫌気がさしていた。
「ええ。本当に、国を守ってくださった夫アーロンはご立派でしたわ」
「ああ。兄も悔いの多い人生にはなったろうが、それもまた運命だろう」
だらしなく白いシャツの胸元を広げたヒルデガードはそう言いながら、赤いワインを右手で持っていた丸いグラスの中で転がした。
「ブランシュは、大人しく可愛らしい女性で素晴らしい。君のような人と結婚できれば、それはそれは幸せなことだろう。死んだ兄も惜しいことをした……国を守って死ねたならば、軍人としてそれも本望だろうが」
亡き兄を揶揄するようなヒルデガードの言葉を聞いて、その場に居た使用人たちの空気が悪くなったけれど、私は片手を挙げてそれを留めた。
特にクウェンティンは、無表情が常であるというのに、ヒルデガードが兄アーロンを馬鹿にしたような軽口には、とても我慢できぬようですぐに殺気立ってしまう。
兄を嘲り怒りを煽るような言葉に、私だって嫌気がさしていた。
「ええ。本当に、国を守ってくださった夫アーロンはご立派でしたわ」
「ああ。兄も悔いの多い人生にはなったろうが、それもまた運命だろう」
だらしなく白いシャツの胸元を広げたヒルデガードはそう言いながら、赤いワインを右手で持っていた丸いグラスの中で転がした。