「クウェンティン……嫁いで来た私によくしてくれて、貴方にはとても、感謝しているわ。けれど、こうなってしまったからには、喪が明ければ私はキーブルグ侯爵家を出ていくわ。だから、ここに残ることになるクウェンティンはヒルデガード様には逆らわない方が良いと思うの」

「奥様……それは」

「さっきクウェンティンも言った通り、喪が明ければ、私は他の誰かと再婚することも出来る。そうした方が……良いと思うの」

 これは、今思いついたことでもなく、できればこうした方が良いだろうとこれまでも思っていた。

 ……白い結婚の未亡人など、生き馬の目を抜くような世知辛い貴族社会の中で、誰が認めてくれるだろうか。

 だから、キーブルグ侯爵家の正当な血筋を受け継ぐ弟、ヒルデガードが帰って来たのであれば、彼に全てを託すことが一番に丸く収まる方法なのだわ。