それは、本来であれば、式中に宣誓してから、二人でサインするはずの婚姻書類だった……私の名前のみが空欄で、アーロンは先に記入を済ませているようだった。

 あまりの急展開に動揺してしまった私は、なんとか落ち着こうと、何度か息をつき、震える手でそれにサインをした。

 結婚式に集まってくれた列席者たちにも、クウェンティンが淡々と詳しい事情を説明し、当事者の私は挨拶するだけになった。

 義母と義妹も参列者に謝罪をする私を見て「みっともない」と小声で言い、意地悪そうに笑った。

 けど、流石にこの場では人目を気にしてか、二人はいつものようなあからさまな嫌味は言わなかった。

――そして、私が彼の妻としてキーブルグ侯爵家入りして一週間後……アーロンの訃報が届いた。