私はまだ夫を怪我人扱いしている執事クウェンティンにそう言った。

「やけに信頼されているんですね。医者はまだ安静にしろと、この前に指示されておりましたが」

「……アーロンほど、信頼出来る人なんて居ないわ。貴方もそう思うでしょう?」

 少々怒りっぽいところがあるのだって、彼の意志の強さを表していた。多くの軍人を纏めるのならば、舐められてはいけないと常に気を張っているところだって。


「……奥様。旦那様と結婚出来て、良かったでしょう? 結婚式後の一年間は大変でしたが」

 無表情のままのクウェンティンは、これまでにそうは見せずにキーブルグ侯爵家に嫁いだ私が、アーロンと結婚したことについてどう思って居るか、気になってしまっていたに違いない。

 クウェンティンにとってアーロンは自慢出来るほどにとても大事な主人なので、妻の希望を最優先にしろと指示されていたから、出会ったばかりの私の願いだってすべて叶えてくれた。

 ……今では何もかもが、理解出来る。

「ええ。とても幸せよ。アーロンと出会えて……結婚出来て、本当に良かったわ。彼以上の人なんて、どこにも居ないもの」