こんな命の危険がある状況ではあるのだけど、彼の発言が響いて周囲もぽかんとしてしまった。

「……大丈夫です。旦那様は、絶対に死にません。奥様。奥様と幸せになるために、何回でも死んだって、地獄の王を騙してでも生き返りますよ」

 クウェンティンは呆れたようにそう言ったので、止まらないのではないかとまで思って居た私の涙も引っ込んでしまった。

 生涯不敗の軍神。そして、知略を使わせれば右に出る者は居ないと言われてしまうほどの将軍アーロン・キーブルグ。

 絶望しているだろう私と彼が育てた執事クウェンティンを、こんな発言で笑わせて安心させてしまうのだって、彼にはきっと……お手のものなのよね。

「ふふ。なんだか、アーロンらしいわね」

 そして、アーロンはそう思わせたのなら、勝算があるのだと思う。そういう人だもの。これまでの彼との時間で、私は夫アーロンのことが十分過ぎるほどに理解していた。

「奥様……笑っている場合ではありません。これは、国中で面白い噂話になりますよ。あの人らしいですけどね」