サムは一瞬呆気に取られていたようだったけれど、私から事情を聞いて、すぐに扉から出て来た。

「こっちよ!」

 私はサムをアーロンの元にまで導き、様子を見ていたらしい村人たちも、第三者たるサムが出て来てくれたことで顔を見せ始めていた。

「……旦那様……旦那様。サムでございます。ああ……なんとお労しい……」

 アーロンは自分で止血しようとしてか、着用していた上着を刺された場所に巻いていた。

「サムか……すまない。俺は今、歩けないと思う……どうにかなるか?」

 簡潔に自分の状況をサムに説明したアーロンは、もう目の焦点が合っていなかった。さっきも……見えなくなっているって言っていたから、もう私たちも見えないのかもしれない。

「大きな布を、借りてまいります。人手があれば、運べますので」


「悪い……」

 サムにそう告げてもう限界だったのか、アーロンは目を閉じて身体の力を抜いた。

 その様子を見たサムは慌てて立ち上がり、知り合いらしい人に声を掛けて、にわかに周囲が騒がしくなっていた。ヒルデガードが居る方向を見れば、近付いて来た人に悪態をついているようだ。