私と結婚するために将軍となったアーロンは、今では不敗の軍神と恐れられるようになってしまった。

「けれど、アーロン。辞められますか? 皆、貴方を頼りにしています。もちろん、私だって一緒です」

 アーロンさえ居れば大丈夫だと思われてしまうくらいに、彼が考え出すいくつもの奇策や知略は素晴らしいらしい。

 辞めたいという事は簡単だけど、おそらく周囲は必死で止めるはずだ。

「だが、ひとたび戦いが起これば一年も……いや、それ以上に妻に会えなくなる。それは、嫌だ」

 ため息をついたアーロンだけど、私は彼が簡単に辞められないだろうと予想し、何も言わないことにした。

 きっと辞められるわと励ます事は簡単だけど、きっと、キーブルグ侯爵位を維持させる事を考えれば、辞められないはしないもの。


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「まあ……すごく素敵だわ」

「ゆっくりまわろう。近くに宿を取っても良い」

 観光で栄えているという小さな村には可愛らしい土産もの屋が建ち並び、私はどこの店に入ろうかと目移りしてしまった。

「……どれもこれも、可愛いわ。どうしようかしら」