「きっと、クウェンティンはこう言うわ。旦那様には奥様の意向を第一にとお聞きしております。奥様は贅沢な生活は、望まれませんでした……って」

 今ではクウェンティンの無表情や、こちらの話を言葉通りにしか受け止めないという理由が私には理解出来ている。

 彼は裏稼業を営む暗殺者として育てられたから、気持ちの機微がわからずに、そのまま大人になってしまった。

 ……あまりにも育った環境が特殊過ぎて、感情を殺すことが当たり前になってしまったのかもしれない。

 アーロンは真面目な表情をして頷いた

「俺がもっと細かく指示をしていれば、良かった。悪かった」

「いいえ。アーロンはこの国を……私の命を守るために、それこそ死ぬ気で戦ってくれていたのです。それを感謝こそすれ、非難したりするなど、絶対に出来ませんわ」

 アーロンは三倍の数の軍勢を相手に、それこそ死に物狂いで私たちを守ってくれたのだ。

「ブランシュ……お前に会う前にはもう、戻れない。軍人だって辞めても良い。周辺国は当分何も出来ない。平和が続くだろうし……今は誰も、俺に将軍であることを強要しない」