「そうだ。俺がもし本当に死んでいたらどうする。あの状況であれば、ヒルデガードが家督を継ぐことになっていたのかもしれないが、俺の血を実際には持たない者がキーブルグ家の直系として育てられることになる。貴族の名を騙る事は罪だ。それは叶わなかったとしても、この家の乗っ取りを企んだんだ」

「……それは……っ」

 クウェンティンとアーロンにそうあるべきだと説明されても、私はどうしても気が進まなかった。これまでに義母は絶対に逆らえない存在だったし、勇気を出して逆らっても酷い事になってしまった。

 だから、もし……。

「ブランシュ。そんな顔をするな。俺はキーブルグ侯爵で一国の将軍だぞ。エタンセル伯爵夫人が、元公爵家であろうがなんなんだ。俺には関係ない。不当な扱いをされたならば、遠慮なく意見させていただく」

 私がそれを止めようとしていることを察してか、アーロンは呆れたようにそう言った。

 アーロンは決してお義母様のような人ではない。けれど、どうしても怖いのだ。

 何か……私の大事な物をまた、壊されてしまうかもしれない。痛いことをされてしまうかもしれない。