それを先のキーブルグ侯爵は何らかの方法で揉み消して、縁を切って勘当したということ?

「ええ。そうですよ。奥様。今でこそお伝えしますが、僕が居なければ、奥様の貞操の危機は、あの男が現れてすぐに訪れておりました」

 クウェンティンはなんでもないような平坦な口調で言ったので、私はその事を理解するまで時間が掛かってしまった。

 ……それって、ヒルデガードが私の寝室に忍び込もうとしていたのを、クウェンティンが必死で食い止めていたということ?

「……そうなの?」

 なんてこと。信じられない。

 けれど、私がヒルデガードを邸に入れるという判断を下したから、クウェンティンは、それを叶えてくれていたのだ。

「ええ。その通りです。生かしても延々と罪を犯すのならば、誰も居ない場所に幽閉するか殺すしか二択しか選択肢はありません」

「そうだ。ブランシュ。血の繋がった兄の俺が言うのもなんだが、あいつは本当に生かしておいても罪を犯し続けるどうしようもない奴なんだ」

 二人からここまで言われると、止めている私の方がおかしいのかもしれないと思って少々悩んでしまった。