「待ってください! ヒルデガードについては、私も色々と思う所があるので……どうか捕まえるだけにしてください」

「ブランシュ。君だってよくよくわかっただろう。あいつは本当にどうしようもない奴で、更生は望めないんだ」

「けれど……アーロンの血の繋がった弟です。殺せば後悔するかもしれません」

 アーロンが軍人で殺す殺されないの世界で生きていたことは、私だって理解している。それでも、止めたかった。

 私はアーロンのことが好きだから、出来るだけ未来に彼が後悔するようなことを減らしたいと思うのだ。

「それは……あまり考えられない。あいつは、美しい人妻と見れば口説いて寝取るような最悪の倫理観を持ち、その後の事には一切責任を取らない。薄汚い欲望に負け盗みだってやるし詐欺まがいの事だって平気でする。罪悪感なんて、感じることもない。君のような人には信じられないかもしれないが、そういう人間だって存在するんだ」

「まあ……」

 人妻を寝取るなんて、すぐに死罪になりそうなほどに重罪だった。それも、アーロンの口振りでは一回や二回の話でもないらしい。