「ええ。おそらくは、そういう事でしょう。深夜に人目を避けてという話ですし、そうでなければ、あの邸にあの女が近づく理由はありません」

「未亡人となったブランシュの性格から、俺の子を宿していると主張する女を追い出す訳もなく、あの手紙を偽造したのも、エタンセル伯爵夫人であれば可能だろうな。我々は近い縁戚に当たるし、伯爵夫人から必要だと言われれば業者とて従うだろう」

 クウェンティンとアーロンは、義母があのサマンサを送りこんで来た事を前提に話していた。

 けれど……まだ、信じられない。サマンサは確かに妊婦だった。お義母様ならば、私が追い出さないと踏んで、妊婦を雇って送り込んで来る事だって出来るだろうけど。

 それをして、キーブルグ侯爵家を乗っ取ろうとしていた?

 ああ……どうして、そんなことをしようと思うの。

「それに、旦那様の弟君も居場所を突き止めました……どうなさいます?」

「それは、俺の指示を待つ必要があるか? 前に指示したままだ。さっさと殺せば良いだろう」

「御意」

 私が考え込んでいる内にすんなりと弟を殺すことに決定しているので、慌てて彼らを止めた。