アーロンはそう言って隣に座っていた私を抱きしめたので、どうやら喜びのあまり黙っていただけのようだったので、私もほっと安心した。

「ふふ……喜んで貰えて、良かったです」

「喜ぶというか……感激だよ。ブランシュは本当に可愛い。愛している……君を守るためになら、何度だって死ねる」

「死なないでください!」

 私は慌ててそう言うとアーロンは微笑み、そのまま顔を近づけると口づけをした。

「ああ……絶対死なない。君を残しては、死ねない。地獄からだとしても、いくらでも舞い戻って来るよ」

 アーロンは『血煙の軍神』とまで呼ばれて、戦術の天才だと称されているらしい。

 生涯不敗を誇る彼さえ居れば、戦いに敗れることはないのだと……けれど、私はこう思った。

「アーロンが生きていれば、それだけで良いです。私は貴族でなくても構わないから……貴方に生きて居て欲しいです」

 母が生きていてくれれば……そう思って、何年も生きて居た。

 結婚してからもアーロンが生きて居てくれればと、そう思って居た。だから、彼が生きて居た奇跡を、もう私は二度と失いたくなかった。