アーロンの顔がより近付いて、私は自然と目を瞑った。唇には柔らかくて熱い唇が触れて、産まれて初めてのキスをした。

 閉じていた唇を割って熱い舌が口内に入り込み、気がつけばお互いに舌を絡ませていた。

 キスというと私は触れるだけのキスを想像していたので、唾液を交換し合うような深いキスになって、少なからず動揺していた。気持ち良くて止めたくないけれど、アーロンに風邪がうつってしまう。

 余計なことを気にしていると彼に気がついてしまったのか、アーロンはふと顔を上げて私の顔を見た。

「顔が真っ赤だ」

 そう言って嬉しそうに微笑んだので、私は何も言えなくなってしまった。

 本当に恥ずかしいく思ったし息も上手く出来なかったので、顔が真っ赤になってしまうことは仕方ないと思うのに。

「……アーロン」

「こんなにも純情なブランシュが、あんな扇情的な赤いドレスで夜会に出席していたとは……誰に言っても信じないだろうな」

 しみじみとした口調でそう言ったので、私は毛布を再度顔の見えぬように引き上げた。

「もう、忘れてください! 私だって、あれは……忘れたいです」