どうやらアーロンも同じことを考えていたようだ。落ち着いて考えれば、それはおかしなことでもなんでもないのだけど、私は驚き過ぎて高い声を上げてしまった。

「心配するな。体調の悪い妻を、襲ったりはしない。理性は持っているから」

 言葉とは裏腹に私の顔に顔を近づけようとするので、私は慌てて毛布を顔の上に引き出した。

「駄目です。キスは、出来ません!」

 まさかここで拒否されると思っていなかったのか、アーロンは驚いた顔をしていた。

「……え? 何故だ。キスくらい良いだろう? 一年も我慢したんだ。せっかく、こうして要らぬ誤解も解けたのに」

 アーロンはキスを拒まれて、面白くなさそうだった。けれど、私は恥ずかしいだけではない、ちゃんとした理由があるのだ。

「いけません。アーロン。キスをすると、風邪がうつってしまうかもしれないので……」

 現在の私は咳も出ているし、寒気だって少し感じている。そんな状態だというのに、アーロンとキスをして彼に風邪をうつしてしまわないか、不安になってしまった。

「別にうつっても良い。ブランシュが、治るのなら……」