「いいや、仕方ない。俺の方は祖父さんから、将軍になるという目的を完遂するまでは会うことは許されないと言われていたし……ブランシュの社交界デビューはまだだと聞いていたから、とにかく将軍になることを最優先に考えていたから……」

「……アーロン……けほっ……ごめんなさい。咳が」

 水に落ちて身体が冷えたのか、咳き込んだ私に気がつき、アーロンは大きな手で背中をさすってくれた。

「まだ、寒い季節ではないが、冷えて風邪をひいたかもしれない……横になった方が良い」

 アーロンにそう言われて、私は座っていたベッドに入って横になった。

 なんとなく……アーロンはそのまま、彼が眠っている主寝室に戻るのかと思っていた。けれど、帰らずに私の手を握ったままだ。

 彼の青い目にじっと見つめられて、私は頬が熱くなってしまった。

 そうだった……私たち、結婚して一年も経っているのに……。

「そうだ……俺たちは、初夜もまだだった。結婚して一年も経つのに」

「えっ……!」