「ええ。そのように聞いております。子どもを預けた慈善院には旦那様の言いつけ通り、定期的に物資を届けておりますが、シスターたちに育てられて、すくすくと育っていると……」

「つまり、あの女は迎えに行ってはいないんだな……自分の子どもなのにか」

 アーロンはここで考え込むような様子を見せたけれど、立ったまま話すのもと思ったのか、近くにある馬車へと乗り込んだ。

「……奥様。スカートを外したんですね」

「ええ。貴方の講義を聴いていたから、命拾いしたわ。ありがとう。クウェンティン」

「何の話だ?」

 私たちの会話の内容を掴み切れなかったのか、アーロンはそう言ったので、クウェンティンは苦笑して答えた。

「いいえ。旦那様。水中に誤って落ちた場合は、奥様のようなドレスを着た女性はなかなか泳ぐことが難しいです。ですから、スカート部だけを外せば、身軽になり泳ぐことが出来るとお教えしていたのです」

「クウェンティン……ブランシュが助かったから、それは良いが。他に余計な事は教えていないだろうな?」

 眉を寄せたアーロンが尋ねると、クウェンティンは涼しい表情で軽く頷いた。