勝つか負けるか……生きるか死ぬか。そんな戦いを、指揮官である将軍として強いられていたのだから。

 文字通りに死に物狂いで、アーロンは何倍もの軍勢相手にこのスレイデル王国を守ったのだ。

 ……妻の私ごと。アーロンはそう言ってくれた。それは、嘘ではないと思う。

 アーロンは感情的で荒々しい部分はあるけれど、帰って来てから私には常に優しかった。

 好きな色はなんだと聞いてくれて、怪我を見つければ良い薬を買ってくれた。ただ、その場限りの都合の良いことを言ってくれるだけではなくて、十分に態度で私への愛情を示してくれた。

 偽物の優しさかもしれない。けれど、あんな風に話し合いもなく走り去ってしまって良い相手ではなかった。

 ……戻ろう。アーロンだって何か言いたいことはあったはずで、私はそれを聞かぬままに居てはいけない。

 これまで一年間傍に居なかったとしても、夫アーロンが私のことを守り、安全な居場所を用意してくれた事には変わりなく、たとえ爵位を継ぐための道具であったとしても、この上なく大事にしてくれたのだから。